□ スローアーキテクチャー □
昨今では、建売住宅を始めマンションまで、ビニールクロス・ビニール巾木・木目調塩化ビニールの建具や柱・ウレタン塗装フローリングが内装の標準仕様のようです。ローコストを図り、いい加減な工事でも粗が目立たなく補修も簡単になるなど、施工手離れを早くする処置で、端に建築の低レベル化を促進させるものとして、私は一方的にデベロッパーや施工者を非難していました。
しかし現状は少々異なり、購入者による理不尽な要求が起因しているケースもあるようです。よく聞く話ですが、ビー玉を持ち出して床の不陸を確かめたり、壁と床・天井などの隙間をチェックしたり、天然木であっても柄の不揃いを指摘したり、僅か数ミリの天井高さの違いを指摘したり、施工不備を見つけては、工事のやり直しから値引き交渉に至るまで様々なクレームが出るそうです。
まあ、デベロッパーの物件においては、補修は瑕疵期間しか対応してくれませんし、引渡し前からあった傷や不備も入居後の発見となっては対象外です。そのため、必至になるのも当然かもしれませんが…!?
どちらがイイ悪いという話ではないのですが、購入者側は建築を一般工業製品と勘違いをしてしまい、施工者側は無難な路線を辿ってしまった、というのが現状のようです。
日本の家電や車においては、世界でもトップクラスを誇る高品質ですし、機械が製品を組み立てて精度を補うことも珍しくありません。しかし、建築の現場では生身の職人が作成しています。暑い日には集中力も落ちるでしょうし、若手と熟練では出来が違うのも当然でしょう。
元来、建築精度で人の手による誤差は味と捉えるべきで、木材であれば気候による伸縮分の隙間を人為的に作らなくてはなりません。それでも神社仏閣や高級ホテルの仕上げレベルを望むのであれば、増額をしてランクの高い職人を連れてくるしかないのです、それから質の高い建材に交換して。
上記においては、引渡し時における完成度の話でしたが、商業店舗でもないかぎり建物の使用年数は、10年、20年というスパンで考えるべきでしょう。もちろん新品時の美しさや完成度は大切ですが、時間と共に色や風合いが変化するのも楽しいものです。
石油系の素材では、柄が薄くなったり、変色したり、汚れたり、磨耗したり、剥がれたりと、それこそ数年の命かもしれません。自然の無垢材であればキズや凹みでも中身はちゃんとありますし、汚れや変色が激しければ表面を削ってリニューアルするという選択もあります。
最近では、化学物質の含まない材料を求めたり、資源を大切にする動きなどから、古材を積極的に使用する人も増えてきました。今後は無垢のフローリングでも大切に建替えに使用する時代が来るかもしれません。
床であれば無垢材のフローリング、壁であれば珪藻土・和紙などを使用しますが、それなりにヒビやはく離などもあります。木製建具であれば狂いにより建て付けが悪くなることも普通です。それこそが自然素材の証ですので、修繕をして手を掛けてやれば更に長期間付き合うことができますし、大事にした分、風格も生まれ愛着も湧いてくるものです。
手間ではなくて、ゆとりとして経年変化を楽しめるようなスローライフ=スローアキテクチャーはいかがでしょうか。

